コウモリはあまりなじみ深い動物ではないため、家に住み着かれたりして突然身近になると、襲われないか不安になるものです。
攻撃性は高いのか? 噛みついたり血を吸われたりしないか?そんな不安に駆られる方もいらっしゃるでしょう。
本記事では、日本のコウモリの生態と、攻撃性・危険性についてご紹介します。意外な事実がわかり、コウモリがちょっと愛らしい存在に思えるようになるかもしれません。
アブラコウモリの生態
日本にはさまざまな種類のコウモリが住んでいますが、夏の夜に市街の街灯付近を飛び回っているのは、アブラコウモリと呼ばれる種類のコウモリです。日本で人家に住み着くコウモリはほとんどがこの種類なので、家にコウモリが住み着いている気配があれば、アブラコウモリの仕業である可能性が高いです。
体長は4~5㎝の小さな生き物で、1センチほどのわずかな隙間があれば狭い空間にも簡単に入り込むことができます。通気口などから天井裏などに侵入して、群れで行動します。昼間は太陽の光を避け、夕方になるとエサを求めて巣から出てきます。
放った超音波が自分に跳ね返ってくる時間を計算して、障害物や獲物との距離を測る、エコーロケーションという能力を持っています。
鳥類と思う方もいらっしゃるようですが、母親と同じ姿の子供を母乳で育てる哺乳類です。自由に空を飛ぶことができる唯一の哺乳類として知られます。
コウモリに攻撃性はある?
アブラコウモリをはじめ、日本で見られるコウモリには攻撃性はありません。
全くもって好戦的な気性ではないので、人間めがけて襲ってくることは非常にまれ。間違って家の中に入ってきてしまったときは、たいていは閉塞的な空間や明るさに戸惑ってパニックになり飛び回っているだけなので、人間を攻撃しようという気持ちは実はほとんどありません。
そんな温厚なコウモリでも、命の危機を感じたときは別です、人間におもむろに触れられたり、捕獲される危険を感じたりしたときには、噛みついてくることはあります。
自分から攻撃を仕掛けるような好戦的な性格ではないにしても、正当防衛として噛みついてくることはあるのです。
物理的な攻撃よりも衛生被害が深刻
日本では、コウモリの物理的な攻撃よりも、もっと心配しなければいけないことがあります。それは、コウモリによる健康被害です。
糞による害
もしも室内にコウモリが侵入してきたら、その狂暴性におびえる必要性はありませんが、衛生的には大ダメージですので、放置するのはやめましょう。
また、コウモリのフンは建物にとっても大きなダメージになるので、住み着かれたら早めに手を打つのが得策です。
ときどき、コウモリが間違って部屋の中に入ってきてしまうことがあります。
どうしたらいいのかわからず部屋の中に放置していると、糞をあちこちにまき散らします。一日に4回以上も糞をするうえ、糞そのものに雑菌や病原菌がたくさんついています。糞をじかに触らなければ無害というわけではなく、乾燥したフンは空気中に巻き上げられて、呼吸と一緒に人間の体内に入ってくるのです。
感染症やアレルギーの悪化を招く可能性があり大変危険ですので、きちんと対処しましょう。
ダニ
コウモリはダニを人間に媒介することもあります。
過去には、「マルヒメダニ」というダニがコウモリから人にうつったという事例があります。マルヒメダニは人へも吸血被害をもたらすので、ひどいかゆみや異物感をもたらします。マルヒメダニ科のダニ十数種類は、レプトスピラ症やダニ脳炎など深刻な病気を人間に移すこともあるので、甘く見てはいけません。
日本のコウモリは血を吸わない
コウモリというと、すぐに吸血を連想して怖がる人がいます。
ドラキュラをはじめとしたヴァンパイアものの文芸・映像作品の影響で、コウモリと吸血行為とのつながりが強調された結果ですが、事実、吸血コウモリは南米を中心とした限られた地域にしか生息していません。
日本にいるアブラコウモリは、蚊やコバエなどの小さな虫が大好物です。コウモリが夏に街灯の周りを飛び回っているのは、街灯に集まってくる小虫を食べるため。日本には吸血コウモリはいないので、血を吸われるかもしれないということで警戒する必要は全くありません。
日本のコウモリは狂犬病を運ぶ可能性も低い
コウモリが人間に与える害の中で、もうひとつ危惧されやすいのが「狂犬病」です。
しかしこの狂犬病に関しても、日本のコウモリはほぼ無害といっていいでしょう。
コウモリによる狂犬病の感染が取りざたされているのは、アフリカ・ヨーロッパ・アメリカ大陸などです。もともとコウモリは遺伝子的に非常に人間と近いので、人間に発症しやすいウイルスを運ぶことで知られます。外国では、エボラ出血熱などの感染源としても話題に上がるほどです。
ではなぜ日本では問題にならないのかというと、日本にはそもそも狂犬病やエボラのウイルスがないからです。
日本は世界的にも珍しい「狂犬病清浄地域(狂犬病がないとされる国)」です。1970年代以降狂犬病の発症は報告されておらず、もう50年近くも狂犬病とは縁がない国なのです。
そのため、日本にいるコウモリが狂犬病の運び手になるという可能性はきわめて少なく、外国から狂犬病ウイルスをもったコウモリが日本に入ってくることもないと言われているので、日本でコウモリによる狂犬病を心配する必要はないと言えます。
コウモリ対策をするときにやってはいけないこと
家にコウモリがやってくるというとき、なんとかして追い払いたいという方もいらっしゃるでしょう。そんな時に、絶対にやってはいけないことがあります。
素手で触る
素手で触れただけで感染症にかかる可能性は高くはありませんが、ダニやノミが直接規制する可能性は大いにあります。そこから、寄生虫が媒介した感染症を発症する可能性もあるのです。
傷つける・殺す
「駆除」というと殺駆除を想像する方もいらっしゃるかもしれませんが、コウモリを傷つける行為は法律で禁止されています。
日本には「鳥獣保護法」という法律があり、野生の動物を無許可で殺傷・損傷・捕獲してはいけないと定められています。
傷つけると一年以下の懲役または100万円以下の罰金が科せられるため、鳥獣保護法に触れないよう注意して対策を行う必要があります。
まとめ
日本にいるコウモリのほとんどを占める「アブラコウモリ」は、吸血を含め人間に危害を加える可能性がほとんど全くない温厚なコウモリです。
命の危機を感じなければ噛んだり危害を加えたりする可能性はないですが、それよりも衛生被害が深刻で、種々の雑菌やダニ・ノミなどを媒介することがあるので注意が必要です。
また、日本ではコウモリを含め動物が感染経路となる狂犬病は長年発症例がなく、コウモリからの感染の可能性もとても低いです。
予想以上におとなしく無害なコウモリですが、衛生被害だけが厄介なので、家に住み着かれた場合はすぐに駆除すると安心です。
鳥獣保護法に触れないよう、殺したり傷つけたりしない正しい方法で、コウモリを家から追い出すようにしましょう。
難しいようであれば、プロの業者に協力を依頼するといいでしょう。