ドラキュラなどの恐ろしいイメージを連想させ、怖がられがちなコウモリ。哺乳類の中では唯一飛行することができたり、またその種類は1,000種類以上と、哺乳類全体の1/4を占めるほど多かったりと、非常にユニークな動物です。
じつはそんなコウモリの一部は、ペットとして飼育することが可能なのです。イメージに反して意外とかわいらしい動物で、かつ高い知能を持っています。知能の高いコウモリは世話をしてくれる人を記憶しており、飼い主になつくこともあるそうです。
近年ではエキゾチックアニマルとして、コウモリを取り扱うペットショップも増えています。今回はそんなコウモリについての解説と、その飼育の方法についてまとめてみました。
コウモリを飼うつもりなら…その生態を知ろう
「コウモリ」と一口にいっても、そのなかには種類があります。
ココウモリとオオコウモリの違い
まずコウモリは、大きくわけてココウモリとオオコウモリに分類することができます。
ココウモリはその名の通り比較的小さな種類で、雑食性のコウモリです。暗い場所や夜間に活動することが多いので、視力はあまり発達しておらず目が小さくなっています。
その代わりに超音波を使ったエコーロケーションが可能で、暗闇でもぶつからずに飛行したり、餌である昆虫を捕獲したりすることができるようです。
日本で多くみられるアブラコウモリや、吸血コウモリとして有名なナミチスイコウモリも、このココウモリに分類されます。
オオコウモリはココウモリと比較すると大きくなる種類が多く、果実や木の実を好んで食べる草食性のコウモリです。ココウモリとは反対に昼行性で、視力が発達しており目が大きいのが特徴となります。
日本には小笠原諸島などの熱帯に近い気候の土地にのみ、数種類のオオコウモリが生息しています。しかし、国内のオオコウモリは天然記念物に指定されているため、その姿を見ることは難しいでしょう。
ペット用はオオコウモリ
前述した2種類のうち、ペットとして流通し飼うことのできるコウモリは一部のオオコウモリの仲間です。目が大きいため、ココウモリと比較すると、とてもかわいらしい顔立ちをしており、ペットとして人気が出るのも納得です。
主食がフルーツなので、ペットショップではフルーツコウモリやフルーツバットと表記されている場合があります。飼育に昆虫などが必要ない点から、比較的飼育しやすいペットといえるのではないでしょうか。
コウモリは血を吸う?
コウモリは、ドラキュラなど吸血鬼と関連付けられることが多く、人間を襲い吸血するイメージを持たれることもある生き物です。
しかし、哺乳類から吸血をおこなうコウモリは中南米に生息する「ナミチスイコウモリ」という種類のコウモリ一種のみなのです。ナミチスイコウモリが主に襲うのは、牛や馬などの家畜であり、積極的に人間を襲うことは少ないそうです。
探検家によって偶然発見されたチスイコウモリは、血を吸う点や闇夜を飛び回る姿が吸血鬼を連想させるということで、バンパイアバットと名付けられました。これが現在のコウモリのイメージにつながっているのでしょう。
コウモリを飼うことってできるの?コウモリの正しい飼い方
冒頭でもお伝えしましたが、一部のコウモリはペットとして飼育することが可能です。その中でも国内でペットとして流通しているのは、海外原産のオオコウモリの一部です。
現在コウモリの輸入は禁止されていますので、流通しているのは国内で繁殖されているものです。繁殖には時期があるため、季節によっては入手が難しい場合もあります。
飼うのに必要なもの
1.ケージ
コウモリはケージでの飼育が一般的です。大型鳥類(オウムなど)用のケージがよいでしょう。鳥類用で止まり木のついているケージなら、コウモリがぶら下がることも可能です。
2.ヒーター類
海外原産のオオコウモリは熱帯地域に生息しているため、飼育環境も25℃から30℃程度に保つ必要があります。爬虫類向けのサーモスタットと、それに対応する保温・照明器具を用意しましょう。
3.給水機
コウモリの給水には平たい皿ではなく小動物用のウォーターボトルを用意しましょう。ケージの壁面に取り付けることのできるタイプが最適です。
4.餌皿
食べ過ぎにならないように、ほどよい大きさの餌皿であれば大丈夫でしょう。鳥類向けの餌入れであれば、ケージの壁面に取り付けられるので使いやすいです。
コウモリの食物
オオコウモリはフルーツバットとも呼ばれる通り、主食は果物です。バナナやマンゴーなど暖かい気候で育つ果物を、小さく切ってオオコウモリに与えましょう。
また果物のみでは栄養が偏ってしまいますので、ローリーネクターと呼ばれる鳥用のバランスフードやゴートミルク、モモンガ向けのビーポーレンを併せて与える必要があります。
オオコウモリは昼行性の動物で、生活リズムを保つ必要があります。食事は朝晩2回、決まった時間に与えるなどの工夫をしてください。
コウモリの好む環境
先ほどもお伝えしましたが、ペットとして販売されるコウモリは熱帯に住む生き物なので、飼育するケージや部屋の温度を25℃~30℃度に維持する必要があります。また運動量が多い動物なので、なるべく活動できるスペースを確保できる環境が好ましいです。
コウモリを飼う上で、注意すべきこと3つ
コウモリを飼う際には、下記の3点に注意しましょう。
野生の飼育はNG
「コウモリなら野生にたくさんいるし、ペットショップで買わずに捕まえてしまおう」。「家にコウモリが住み着いているし、捕まえればペットにできるかも」。と考える人はいるかもしれません。
しかし、野生のコウモリは人にも有害な病原菌を持っている場合が多く、その中には狂犬病のように命にかかわる病気も含まれています。野生のコウモリのフンや体に触れることは、極力避けるべきでしょう。
さらに、日本では野生のコウモリを捕獲した場合、罪に問われる可能性があります。一般的な野生動物は「鳥獣保護法」により捕獲・駆除が規制されており、コウモリに関しても例外ではありません。むやみに捕獲することは絶対にやめましょう。
温度・栄養・衛生環境に注意
ここまでに何度かお伝えしていますが、オオコウモリに最適な温度は25℃~30℃です。日本は温度変化が激しい環境の国ですので、温度を維持する工夫が必要になります。
また、コウモリは多くの回数排泄をおこないます。コウモリのフンは臭いが強いため、頻繁な掃除が必須となります。ケージの床面にはペット用シートや新聞紙を敷くなどして、清潔な環境を維持してください。
運動をさせよう
コウモリは本来飛び回る動物ですので、運動量も多いです。可能であれば1日に数回ケージから出して自由に飛び回らせてあげましょう。
部屋の中を飛ぶ際にフンをする可能性もありますので、なるべく物のない空間だとよいでしょう。どうしても部屋の中を飛ばせない場合は、広いケージで飼育をしてください。
コウモリを飼うのに向いている人とは?
コウモリを飼うのは簡単なことではありません。生活リズムや住環境をコウモリに合わせる覚悟が必要です。
コウモリを飼うには、決まった時間に餌を用意できる生活リズムの整った人で、コウモリのことを考えてバランスの整った餌を用意できる人、頻繁にケージを清掃できるマメな人が向いているのではないでしょうか。
まとめ
じつは賢く愛嬌のある、ペットに向いた生き物だったコウモリ。今回はその分類とそれぞれの特徴、コウモリの飼育に必要なものや具体的な飼育方法についてお伝えしました。
コウモリの飼育は簡単なものでありませんが、平均寿命は10年~15年ともいわれているので、適切なお世話をしてあげれば犬猫に劣らぬ人生のパートナーとなってくれるのではないでしょうか。
動物を飼育するには想像以上に覚悟が必要です。ペット用として販売されているコウモリは本来外国の生き物であり、日本の環境で生き延びるのは難しいでしょう。
ですから、絶対に途中で放り出すことなく、終生パートナーとして面倒をみてあげてくださいね。